突然の出会いから一週間。

「高野ちゃん、ついに春がきたんだってぇ?」

「最近高野ちゃんキラキラしてるもんね。恋の力ってすごいわぁ」

日勤から夜勤に仕事の引継ぎをしたあと、職場のみんなで更衣室にぞろぞろと引き上げる途中、先輩二人に左右から詰め寄られる。

慌てて返事をしようとする私より先に直美が割り込む。

「そうなんですよ!その彼との出会いの場に私も一緒にいたんで見ましたけど、いいとこの坊ちゃんっぽくて、ちゃっかり佳苗を高級車でお持ち帰りですよ!」

直美も適当な返事をするから私は慌てて訂正をする。

「直美、そんなんじゃないって!素敵な人と出会ったけど、家まで送っていただいただけで、何もないですよ」

本当にこれと言って何も起こってない。

坂木さんと穏やかにメールのやりとりを続けているだけ。

最初はギャラリーに行く日にちを決めるために。

もちろん、ギャラリーにお邪魔する日はさほど時間がかからず決まったけれど、必ず季節の挨拶を入れてくる丁寧さに、私もその日の出来事や気持ちを添えて返事をするようになった。

交換日記のようにその日の出来事を教えてくれるのがメインの内容になり、時々綺麗な写真付きのメールを送ってきてくれたりする。

坂木さんから倉持先生の変顔写真が送られてきて大笑いしてしまったので、思わず直美に話したら、今日先輩たちにも話が広がっていたみたいだ。

けれど、それだけ。