あ~、もうなんであんな事したんだろう。

湊叶さん、まだ怒ってるかなぁ。

この一週間、ずっとこんな調子。


学校に行っていても、湊叶さんのこと考えてしまうし

勉強にも身が入らない。

同じクラスの紗和ちゃんに話せば、茶化されてしまう始末。

襲ったとか襲われたとか、そんなんじゃないのに――。


島へのフェリーの中でも、湊叶さんに会った時どう切り出そうかと

ソワソワして落ち着いて座っていられない。



「よー、つばさちゃん。そんなにソワソワして、何かあったのかい?」



声を掛けてきたのは、丸顔の人の良さそうな60代くらいの男性。

浅黒く日焼けし、顔には深く皺が刻み込まれている。



「源さん。んー、ちょっとね」



湊叶さんとのこと、源さんに話すのはちょっと違う気がして

言葉を濁した。