夏休みも終わる頃

結と病院の屋上で、日なたぼっこ中

「あちーー」
「クーラーの中にばっかりいるからだよ」

「結さぁ、彼氏とデートとかいいわけ?」
「……うん」

「うまくいってんの?」
「……たぶん」

「なにそれ?」
「……」

黙られると困る!!
てかっ、うまくいっててもらわないと困る

「婚約しているの」
「そっか!すげぇな!婚約か!ええ!?」

驚いて、結の方を見たら、俯いていた

「だけど、避けられてる
最初は、気のせいだって思ったの!
今は、完全に……
何か…したのかな……」

「そういうときは、話さなきゃダメだ!」

「そうだよね……
なんとなく、ひっかかるの
健康で何の心配もいらない人と、結婚したいだろうなって… 負い目ってやつ?
彼ね、野球選手になるの!
目が見えなくなってさ、あたしがその夢
奪うんじゃないかなって…
だから……避けられてるのかなって」

「目、悪いの?」

「あたしがね!
いつ見えなくなるかわからないの……
左は、全く見えないから
さりげなく、いつも先輩の左を陣取ってたの!知ってた?」

「全く」

優しいお母さんになりたい

結は、そう言っていた

同じ病気だから、わかる

先がわからないから、俺も結を彼女にしようとまでは、思わない

置いてけぼりにしたくないから

結が彼と付き合う為に、どれくらいの
勇気を振り絞ったか

俺は、わかる

好きだから、そばにいたい

その先まで望まないから、好きで居続けたい

そばにいたいから、さみしい心に蓋をする

何事もなかった

大丈夫

誤魔化して

そうやって、繋ごうとする


「結って、俺と似てるよな……
大事な一歩は、踏み出さない
……後悔すんな?
結は、大丈夫だから!!踏み出せ!!
沼に落ちても、俺が助けてやる!!
好きなんだろ?彼氏!」

「うん。好き」


くぅーーーーー!!!!

その言葉!俺にくれーーーー!!!!

俺は、結が好きだーーーーー!!