金曜日の夜、つまらない仕事を終えて僕は駅に帰ってきた。いつもだったらここから自宅まで自転車で帰る。しかし今日は雨が降っていた。しかもかなりの大雨。傘は一応ある。独り暮らしをしていると天気予報のチェックは自然と習慣になってしまうのだ。けれど今日は一段と疲れていたから歩いて帰る気にはならなかった。
僕は少しの間ざぁざぁと降り続く雨をぼんやり見ていた。そうしている間、僕はなにも考えずにすんだ。大勢の人が迎えを待ち車にのってどこかえ消えていった。それは最初から全て決まっていたかのようにスムーズによどみなく僕の前で再現された。ずっとずっと、ずっと続いていくような、そんな平べったい世界だった。求めるものもなく、自身も誰からも求められない。
僕は特になにかに注目することもなくそこに居たが、突然なにか不自然なことに気づく。目の前の光景が、不自然だ。なにかがおかしい。先程とは異なるなにかが目の前に含まれる。人、車、雨、違う。そんな形あるものではない。ふと僕は後ろに気配を感じた。


そこには二人の瓜二つの女が立っていた。