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卒業式なのに、雪が降っていた。

物凄く寒くて、だけど剣人と二人きりになることの方が嬉しくて、晴れやかな気持ちがしぼむこともなかった。

剣人の傍は暖かい。


「剣人。私たちもう卒業だよ、早いよねー」

離れた所で写真を撮っている同級生の群れを眺めながら剣人に微笑む。


鞄に入れた卒業証書がコトリと音を立てた。


「うん」

「なぁにー、寂しいの?大丈夫だよ、会えない訳じゃないんだし」


そう。

秀才の剣人は学区一の高校、私はその三ランク下の高校に合格を決めている。


あまりにも難しい顔をしているから、どうしようもなく慰めなくちゃいけない気分になった。


「ほら、忙しくてもさ?電話もメールもあるし」


いつまでも下を向いている姿に、もうどうしたら良いか分からない。

え、そんなに悲しんでくれてるの?

なんか私が薄情みたいじゃない。


──と、突然剣人が顔を上げた。


少しホッとする。

気を取り直してくれたのかな。


剣人が口を開く。





「ごめん。絢莉、別れよう」