ケータイ小説 野いちご

カルナック戦記

プロローグ
彼の生きる意味






その日は、事が起きるその瞬間まで、いつもと変わらないそんな日だった。

唯一ついつもとは違う点を挙げてみれば、朝から見知らぬ巨鳥が村の上空を飛び回っていることだけ。

しかしここが郊外も郊外、俗に言う〝ド田舎〟であるため、鳥が空を飛び回ることなど大して珍しくもなかった。


いつも見るより大きい真紅の鳥の躰をぼうっと眺めながら、その少年、エルヴィンは家の影に座り込んでいた。

まだ齢15の彼の手には、綺麗な顔に似つかわしくない巨大な剣が握り締められている。

彼は朝からずっとその剣で特訓をしていたのだ。


(ああ、もうこんな時間か)


気付かないうちに、辺りはすっかり闇に包まれている。
どうやら随分と長い間特訓していたようだ。

(あんな噂聞いたからかな、)

彼は昨日、噂好きの村人達が興味深けに話していた時のことを思い出した。


ーーリヴェルの街がトイフェル軍に潰されたーー


しかし、それは至って信憑性の無いただの噂に過ぎない。

リヴェルはこのカルナック魔導帝国の三大都市の一つであるのだから、そこが滅ぼされようものならこの小さな村にだって政府から一報入る筈だ。

なのにこんなにも落ち着いていられないのは、彼がトイフェル軍の脅威に畏怖しているからだろうか。


いくら帝国軍が圧倒的強さを誇示していようが、トイフェルの前ではそんなものただの政府の自己満足に過ぎないと、彼はあの日確信したのだ。





ーーカルナック魔導帝国。

先の戦争で科学文明は終焉を迎え、魔術が全てとなったこの世の中。


世界最大の大国として世に君臨していたこの国は、歴史上最大の窮地に追い込まれていた。






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