「ねぇねぇ、次はこれにしよう?」
「うん、いいよ」

二人は一緒に眺めていた楽譜の中から気に入ったものを見つけて、一台のピアノの椅子に並んで座った。

一度、目を合わせてから同時に弾きだす。

その楽しげな音色は家中に響き渡った。






あの時、少年は少女に助けられてから、その少女が同じ学校に通っていた事を知った。

しかも隣のクラスだったと言うのだから、少年の普段の周りを気にしない質が裏目に出てしまった事を知り、それはもうショックであった。

少女は先にその事を知っていたものの、マイペースな少年がいつ気づくことかと待っていたらしい。

しかし、玄関口でガキ大将達に絡まれて連れていかれた先のものを見て、これを黙ってめているわけには行かないと助けてくれたのだという。

もっと早く会いたかったのに、と、珍しく拗ねた少年だったが、元来の細かい事は気にしない主義が発動し、程なくして二人は習い事のない日は少年の家で遊ぶようになっていった。

二人は習い事先でレベルの高いクラスで知り合っただけあり、既に出来る色んな弾き方を試して遊ぶという余り子供らしくない遊びをしていた。

とはいっても、本人達は少年の親がその光景を見てびっくりするほど活き活きしていたのだから、いい事に変わりはないであろう。