side/玲音



「あーあー、りりちゃん、パジャマのボタン外れちゃってるよ?

もう、俺が直してあげるっ。

ひとつ、ふたつ、みっつ………」



「って、お前が外してんだろーがっ!!」



バシッ!!


朝陽の差し込むリビングに、りりちゃんの右手が俺の頬を打つ音が爽やかに響く。



「りりちゃん、今日の平手もいい感じだねぇ」



ヒリヒリと痛む頬をなでていると、目の前でりりちゃんが大きなため息をついた。



「あのさー、"これからはコンビニで飯買うよ、自分のことは自分でやるよ…"って、あれ、なんだったの?」



「うーん…

駆け引き的な?」




「……はい?」



キョトンとした顔で俺を見上げたりりちゃんに笑顔を取り繕う。



「うそうそ♡

あれ?

りりちゃん、どうしてお弁当作ってるの?

今日、学校休みだよ?」



忙しげにキッチンのなかを行ったり来たりしているりりちゃんに眉を寄せる。




「今日は午後までバイトでね、月に1回のお弁当の日なのっ♪

今日は子供たちもみんなお弁当なんだよっ」



ウキウキと浮かれている様子のりりちゃんをいぶかしげに見つめる。



保育園にバイトに行くとき、最近のりりちゃんはやたらに機嫌がいい。