そして、桧谷夏生と陽子が資金を手に入れるためのパーティーの日がやってきた。


「あれ、どこにも桧谷って書いてないわ。」


「そう、そんな露骨に物ほしそうなことはしないよ。
表向きはパーティーという形をアドバイスした中務産業の若社長の主催ということになってるんだ。」


「あれ、貴文さん・・・こんにちは。
お母さんといっしょじゃないんですか?」


「ああ、さっきまでいっしょだった。
それで、君も来てることを言ったら、守ってやってくれってね・・・。」


「はぁ、それでここに来たわけね。
お母様もほんとに心配性っていうか、過保護なんだから。」


「そうじゃないよ。志奈子さんは今の夏生たちが、いかに危険か知ってるのさ。
君がさらわれでもしたら、今度は君を守れないんだからね。」


「あ・・・お母様・・・。
こっちを見たのに、すぐにあっちへ行っちゃった。」


「うん、そうだね。夏生たちに知られないようにだろうな。
だけど、今日の祥子ちゃんはセクシーでいろんな男が寄ってきそうかもね。」


「コホン!さぁ、会場入りしないと。
祥子は今日は目いっぱい背伸びすること。
それと・・・俺以外の男についていかないこと。
俺のパートナーにふさわしいメイクにしてもらってきたけど、それはそれで厄介なんだからな。」


「もう、雪貴さん・・・年齢のこと気にしすぎです。
貴文さんも雪貴さんも大人の印象はありますけど、おっちゃんってイメージはありませんから。
気にしなくて大丈夫です。」


「おぃ・・・そこまで言う?
それより、さっき兄さんからきいたんだけど、夏生たちは俺たちから君の本当のお父さんが残した財産を聞き出しに来るかもしれないってさ。」


「えっ?私そんなの知らない・・・あるんだったらお母様しか知らないと思う。」


「俺は君が知ってると思う。
以前、俺が陽子に陥れられたとき、陽子が言ってたんだ。
『お母様が知らないんだから、貴文さんか雪貴さんが宝の地図を持ってるんでしょ。』って。
俺は知らないと言ったら、スキャンダル騒ぎで・・・かなり損をさせられたよ。」


「そうだったの・・・でも私は・・・何も・・・。」


「とにかく、俺といっしょにいるんだ。いいね。」


「私がお父さんの形見の物を持っている・・・?私が持っているもので、小さいころから持っているといえば・・・はっ!」


「どうした?何か思い出したのかい?」


「あのね・・・」