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夜8時。亜理子は両親に友達が今話したい、という嘘をつき、家から学校までを走り、一番早く到着したと思えば、学校一の不思議ちゃん、青樹波奈が校門の前で変なリズムをとり、踊っていた。



「青…早いね」
「あ!きいちゃん!」



亜理子が波奈を呼ぶときには、"青樹"から青をとり、青と呼ぶ。

同時に波奈の方は、亜理子を呼ぶときに、"如月"の"き"から、きいちゃん、と呼ぶ。



「こんばんは。きいちゃんも随分早い到着だね、まだ待ち合わせ時間より30分早いじゃない」



くすくす、と可愛らしく笑って見せる波奈に対して、亜理子の方といえば、少し悔しそうな表情がうかがえた。だが、すぐに笑顔を波奈に向けた。



「ねえ、きいちゃん、楽しみだね。夜の学校なんて、あたし初めて!」
「うん、わたしも。でも…学校の七不思議はさすがにイヤかも」



2人ではしゃいでいると、どこからか早足の足音が聞こえてきて、2人は一度会話を止め、足音の主の登場を待つ。