-空と先生-


あれから何年経ったんだろう。

初めて先生を見た高校の入学式。

癖のある柔らかい髪。

照れ臭そうな表情でマイクを持つ先生。


新垣和人。

一瞬で名前を覚えてしまう。

目が離せなかった。


桜の匂いのする新しい季節。

不安と期待の入り混じる甘酸っぱい高校生活のスタート。


新しい制服も、新しい校舎も、なんだか不安で、中学に戻りたいって思っていたっけ。

そんな私の前に現れたのが、先生だった。


「あの先生、かっこよくない?」


近くに座っていた女子が話をしているのを聞いて、胸がチクンと痛んだ。

思えば、あの時にもう“嫉妬”をしていたのかもしれない。


一目惚れってのがこういうことなのかわからない。

でも、顔だけで好きになったんじゃない。

話している内容も、声も、態度も全部全部、もうたまらなく愛しいって思ったんだ。