先生の足音が聞こえなくなったところで、私達は息をついた。


念のため、滅多に使われることのない管理棟三階の空き教室へ入る。



「....はぁ、はぁ....せ、先輩」

「...何」

「手....離してください」


教室に入ってからも、先輩は息を整えている間、手を離してくれなかった。


泣きそうな声でそう言うと、先輩は唇を噛んで「嫌だ」と言う。

...なんで。


「先輩」

「君、逃げるでしょ」

「逃げません」

「とにかく嫌だ。....もう逃げられるのはこりごりなんだよ」


....あ。

先輩を見ると、眉を寄せて辛そうな顔をしていた。

私、逃げてばっかりだったから。