「あれ?あんた出掛けるの?」



十一月の第一日曜日、午前九時。


私は家の玄関に座って、足をブーツに突っ込もうとしていた。

あー、やっぱり履き心地に違和感がある。

スニーカー履きたい。


我が母すみれは、そんな娘の姿を見て眉を寄せた。


「なんか...いつもより女の子らしい格好してるじゃない。また、里菜ちゃんと千代子ちゃんとどこか行くの?」

「あー...うん。まあ、そんな感じ...」


嘘だけど。


まさか、男子とふたりで遊園地へ行くだなんて言えない。

だって、先輩は彼氏じゃないもん。

付き合ってないのにふたりで遊園地ってどういうこと、と、この母親なら興奮しかねない。

だって彼女の娘には、今まで彼氏と呼べる存在ができたことがないのだから。