俺の初恋は、名前も知らない女の子だった。










「兄ちゃんっ」



ドタドタと音をたてて階段を上がってきたのは弟の珀(はく)。



「あんまり大きな音出して歩くなって言っただろ。
また母さんに怒られるぞ?」


「今母さんいないしー」



ニカッと笑うところが母さんそっくりで俺は思わず苦笑する。


夏休みの課題をしてい手を止め、珀の方に体を向けた。



「で、なんの頼みだ?」


「さっすが兄ちゃん!分かってるぅ」



指をパチンと鳴らして珀は俺に両手を向ける。


その格好はさながら「お年玉ちょーだい」という感じ。


案の定、



「兄ちゃんの読書感想文見ーせてっ」



というお願いをのたまった。