「あ、李穂先輩、」

「黙れ嫌だ」

「ちょっ、おれまだなんも言ってないんすけど!」



そう言ってちょっと情けない、甘えたような表情をしてくるのは、もちろん尚。



部活のために体育館に向かう途中。

ばったり出会ってしまったんだ。



畜生、お前はいつ見ても可愛いな。

顔だけ。



「お前いつもワンパターンだから」

「ひどい!」



毎度毎度、好きだの付き合ってくれだの。

なんかもうやってらんねぇわ。



ため息を吐きながらずんずん進む。

中に入ったところで目が合ったのは、黙々とシュートを打っていた大成。



いつも早いな。

1年生の頃から、大抵1番乗りはこいつだもん。



「尚はまた李穂に貼りついてんのか」

「はい!」

「あれだな。
くっつき虫みたいだ」

「うわ、きも」



ぼそっと呟けば、尚に肩を掴まれる。

ぐわんぐわんと揺らされて、容赦ない。



やめろやめろ!

酔うだろ!