「 私はただ散歩しているだけだよ。」
中年男はさらっと答えた。そして加えて、
「こんな時間に星空観察かい?熱心だね。私にもその望遠鏡を覗かせてくれよ。」と頼んだ。マントの少年は、
「どうぞ。」
と躊躇いもなくその小さな望遠鏡を差し出した。
「星が綺麗だね。」
中年男は呟いた。
「そうですね。」
マントの少年は自分のおかしな格好に全く触れる気配のない中年男を不思議に思いながらも、綺麗な星であったから同意の意で答えた。
「今日はペルセウス座流星群を見ることができるのかい?」
「その予報が出ていたので、見ることができるかもしれません。」
「楽しみだね。」
「楽しみです。」
そんな僅かな言葉を交わしただけで、中年男とマントの少年は、お互いに「自分とどこか似ているな」と感じとったのであった。その二人の共通点、それは孤独と淋しさ。だがそれはもう心のどこかに追いやった。二人はペルセウス座流星群をまった。たわいもない話をしながら。しかし、待てども待てどもペルセウス座流星群は来ない。