「そんなわけないじゃん。あの暗い子がそんな大胆なことできないって。絶対処女だから」
「今22歳でしょ? もっと化粧何とかならないのかね。服もダサすぎ。鏡見たことないのかな?」
「若けりゃ良いってもんじゃないよね」
けらけらと下品な笑い声が倉庫に響いた。
私は鳥肌が立ってきた。本人がいるとも知らず好き勝手に言われ悔しさが込み上げる。
「でも体使って採用してもらったのはほんとかもよ。家近いらしいし、楽できると思ったんじゃん?」
「うわーやだー……」
堪えられず涙が溢れた。鼻を啜ると私がいることが知られてしまうので、鼻水まで垂れてもどうしようもできなかった。
若いから採用されたことだけは本当のことだった。
当時私の前任者が妊娠していて、数ヵ月後に退職することが決まっていた。
インターネットに求人を出し、二十歳だった私が求職者の中で一番若いからという理由で採用を決めたそうだ。
退職までじっくり引き継ぎするから、と未経験でも私の将来性を期待してくれた。家が近かったことは偶然だ。それでも会社まで1時間かかるのに……。
私は前任者の仕事をそのまま引き継いでいる。以前から雑用に近いことまでやっていたらしい。でも前任者は『雑用だけやって給料もらってる』なんて言われていなかった。
「あったー!」
「そう、これこれ! 早く戻ろ」
目的のものを見つけたのかドタドタと三人分の足音が響き、倉庫のドアが閉まって静かになった。
職場自体に不満はないけれど、私の周りは私に対して不満があるようだ。今まで見えていなかったことが見えた。それはあまりにもショックだったけれど。