「―――僕だって、本当は大好きだった……いや、愛していたさ」


息絶えた少女を見下ろし、僕は煙草を一服する。

墨色の空に紫煙が上る。

いつからだったかな。

本当に、最初はレウはあの人の代わりのつもりだった。

でも、レウの中に僕から彼女を奪った男の血が流れてると思うと、どうにも怒りと嫉妬が勝ってしまい、最後にはこの有様だ。

あー……

達成感と、酷い終わり方の失恋とでごちゃごちゃしてる。

今更考えたって、全部終わった事なのに。


「……」


腰を下ろし、冷たくなっていくレウの頬に触れる。

好きだったんだよな、レウは、こんな僕の事。

死ぬ間際に、告白する程。

そして、僕はそれを裏切るような形で、全部壊した。

いや、もう十年以上前、僕があの女を好きになった時点で、壊れてたのか。

こんな、汚れきった心を持つ殺人犯の事を、何も知らないとはいえ好きになってくれたんだ。

だから、これはせめてものお礼……かな。



レウの細い顎をつまみ、口付けをする。



おとぎ話じゃないから、もちろん目を覚ますことは無い。