……あったかい。



もうじき梅雨に入るとはいえ、朝晩はまだ肌寒さが残る。


元より朝はあまり強くない。布団からはみ出た頭を引っ込め、うとうとと微睡む。


雨の音が聞こえた。


二度寝の誘惑に負け、再び意識が飛びそうになったところで、すぐ側で何かが動いてはっとする。


垂れそうになっていた涎を啜りつつ開いた瞼のその先に、僅かに乱れた着物の合わせがあって。


……ぅえ?


何のことやら理解出来ずに視線を上げて固まった。


今にも触れてしまいそうな目と鼻の先に、山崎の寝顔があったから。



え……え!?な、何!?何でこんな……っ。


息が止まって、心の臓がばくばくと早鐘を打つ。


覚醒してしまえば、山崎の腕が背に回っているのにも気が付いた。


な……な、なんっ、何で!?


この謎の危機的状況に身動ぎ一つ出来ない。


視線すら動かせないまま何度も瞬いて、ごくりと唾を飲み込んだ。


そこで漸く、昨夜の出来事がうっすらと記憶の底から浮かび上がってきた。



……えと、もしかして、私あのまま寝て……?



山崎が部屋を出ていったあと、暫く座って待っていたのは覚えてる。でもそこからの記憶がさっぱりだった。


多分、それで布団に寝かせてくれたんだろう。一組しかない布団、居座り引き留めたくせして寝こけた私。


まぁこの状況も仕方ないのかもしれない。