「倉瀬君?どうしました?」

「い、いえ」

「顔が赤いですが熱でもあるんじゃ...」

「本当に何もないですから」


泉先生は眉を潜めた。


「...そうですか。でも、無理はしないでくださいね」


それから思い出したように。


「あ、そうそう。これからクラス発表がありますが、倉瀬君には先に言っておきますね。私達は1年5組です。では、行きましょうか」


そう言って僕らは職員室に寄ってから、本校舎の3号館4階にある1年5組へと向かった。

教室に着いた頃にはもう他の生徒達は席に着いていて、僕はクラスメイトからの視線を感じつつ慌てて自分の席に着いた。



周りには男子しかいない。


分かってはいたけれど、やはり相当な違和感である。

カッ、カッ、カッ

泉先生が黒板に名前を書いていた。


「今日からこのクラスの担任になりました、泉忠也です。担当教科は社会で、君たちには歴史を教えることになります。よろしくお願いします」


パチパチパチパチ


「それでは、初めに出席をとります。今井あ......」


ガラッ


教室の扉が開いた。
みんなの視線が切り替わる。


そこに立っていたのは、髪の毛に寝癖の付いた機嫌の悪そうな人。

でも、その端正な顔立ちに見入ってしまいそうなほどかっこいい。

何処かで見たことがあるような気がしたけど思い出せなかった。


「遅れてすいません」

「初日から遅れて来るとはいい度胸ですね」


優しい声で話す先生、...目が笑っていなかったのはきっと気のせいだ。