早月翔太とケーキを食べに行ったあと、あたしは独りでマンションに帰った。


本当は早月翔太が「家まで送るよ」と言って聞かなかったけど、あたしはアイツに家を知られるのが嫌で断った。

それに何より、今日はシフト上休みになっている兄貴と鉢合わせになってしまえば元も子もない。




あたしがマンションに帰ると、兄貴は晩ごはんの支度をしている最中だった。



「ただいまー」

「おぉ、おかえり。遅かったやん、もうちょいで電話するとこやったで」

「へへっ、ごめんごめん」



兄貴は何を作っているのか、野菜を慣れた手つきで包丁を使って切っている。

…ニンジン、ピーマン、玉ねぎ…うわ、あたしの嫌いな野菜ばっかりだ。



「…何作ってるの?」



お昼のお弁当箱を出しながら兄貴の傍でそう聞くと、兄貴はニンジンを切りながら、



「中華風野菜炒め」



って言った。



野菜炒め……あたし嫌いなんだよー。



「えぇ~…」



そう言ってあからさまに嫌な顔をして見せると、兄貴が「まぁそう嫌な顔すんなや」と話を続ける。



「今日のメインディッシュは、唐揚げやで」

「!!」



唐揚げ!?



「マジで!?やったー!」



兄貴が作る唐揚げ、超美味いんだよね。


そう思って、バンザーイってしながらキッチンを離れると、そんなあたしの背中に、兄貴が思い出したようにしてあたしに言った。



「あっ、世奈」

「?」

「今日、健泊まりに来んねん」





…はぁっ!?