気がつくと、もう空港に着いていた。

私は飛行機から寝起きでふらふらしながら降りた。

今日は、現地解散で、お母さんが迎えに来ていた。

私は祐希くんに「あとでメールする」と言って、お母さんと一緒に帰った。



「どうだった?修学旅行は?楽しかった?」

車の中で、お母さんが聞いてきた。あんなことがあったなんてもちろん言えるはずもなく、

「うん、とても楽しかった。」

とだけ言った。

「そう、よかったわね。」


そのあと、お母さんとは一言もしゃべらなかった。

すると、メールがきた。


『大丈夫か?親には言ってないよな?』

祐希くんからのメールだ。私を心配してくれてたみたいだ。


『うん。大丈夫。何だか、少し怖くなってきた。私、死んじゃうんだね。』

私は、無意識にそう送っていた。

『そんなこと言うなよ。俺だって嫌なのに。』

『ごめん。何か、無意識に送ってた。大丈夫。私なら。』

『そっか…。頑張れよ。』

そのメールがきたあと、私は『じゃあ、またあとでメールするね』と送って、ケータイの電源を切った。

メールをしていると、死にたくないという気持ちが強くなって、今日もまた【ひとりかくれんぼ】で逃げてしまうかもしれなかった。


だから、電源を切った。

家に着いたのは7時頃だった。結構道が混んでいて、時間がかかった。

すぐに夕飯を食べようとお母さんは言っていたけど、私は食欲がなくて、「いらない」と言って、自分の部屋に入った。


そして、誰にも気づかれずに泣いていた。

そのあと、泣き疲れて、ぼうっとしていた。

我に返って、時計を見ると、8時になっていた。


私は寝ることにした。まだ全然早いとは思ったけど、寝ていれば何も考えずにすむと思った。


でも、目を瞑ると、死んでしまった皆の顔や、修学旅行での出来事が浮かんできた。


最初は菜子が、暇だから何かして遊ぼうって言って始まったんだよね。

いや、菜子のせいじゃない。寝言に応えた私の責任だ。

私が何も言わなければ何も無かったのに…。