「秋穂…?だい…ぶ?」



「秋穂?!大丈夫?起きて!」



「ん…?え?」



私は美希と紫音に呼ばれて目が覚めた。なんだか妙にリアルな夢を見たけど…


「良かったぁ!何度呼んでも起きないから心配したんだよ?」



「ご、ごめんね。私は大丈夫だよ。でも、なんだかすごくリアルで怖い夢を見たの。死んじゃうんじゃないかって思ったくらいだったの。」



「もしかして、『かくれんぼ』の夢?」


「え?!なんでわかったの?!」



「菜子が昨日見せたあのルールがあったでしょ?あれを詳しく調べたら、寝言を言った方は、呪いが解けるまで目覚めないらしい…。」



「そして、今、菜子は目を覚まさない。」



神谷くんが美希の言葉に付け足した。私は菜子の方に目を向けた。


見た目はただ寝ているだけにしか見えない。脈を計ってみたけど、異常はない。


でも、どんなに揺すっても、叩いても起きる気配はない。いつもならすぐに起きるはずなのに…。


「すぐにS高校の生徒はロビーに集合してください。」



そういえば、もう、集合の時間だ。

でも、菜子はきっと起きるはずがない。
それを先生達にどう言えばいいのか…


「菜子のこと、先生になんて言う…?」


「もう、眠っていて起きないって言うしかないよ…。」



「行こう。そう言うしかないだろ。」


楽しいはずの修学旅行が、最悪の修学旅行になってしまった。



私達は暗い気分でロビーに向かった。




「みんないるかー?3班がまだ報告ないぞ?」



菜子が3班のリーダーだが、いないため、私が代わりに報告しに行った。



「菜子さんがまだ部屋で寝ています。でも、菜子さん以外はみんないます。」


「わかった。」




なんとか、誤魔化すことができた。



「はい、じゃあ、これからの予定を連絡します。まず、今から朝ごはんを食べて、そのあとに京都を観光します。」


周りから「イェーイ」などの声が聞こえてきたが、私達はそんな気分じゃない。


どうにかして菜子を目覚めさせないといけない。



「秋穂、どうする?」


紫音も私と同じことを考えてたのだろう。



「とりあえず、皆と行動は一緒にしよう?その間に私達で話しあって、解決法を見つけよう。」



その意見に皆は賛成した。こうなったら、【ひとりかくれんぼ】について、徹底的に調べよう。




朝ごはんはホテルにある食堂で食べた。
なんだか、何を食べても美味しいと感じなかった。



私はずっと責任だけを感じていた。



あの時に私が何も言わずに寝ていれば…。




でも、もうどうする事もできない。今のこの状況をどうするかを考えないと。





そのあと、私達は部屋に戻った。



菜子はまだ寝ていた。まあ、起きるはずがないけど。




「【ひとりかくれんぼ】について調べようよ!修学旅行の間に解決しないとやばいよ。」



「そうだよな。皆、それぞれのケータイで調べよう!」



松田くんの一言で皆一斉にケータイで調べ出した。私も慌てて調べた。




【ひとりかくれんぼ】で検索したけど、色んなサイトが出てきた。どれが本当かわからない。




でも、諦めずに色んなサイトを見ていたら、昨日、菜子が見せてきたあのサイトを見つけた。



昨日、見たけどもう一度見てみた。



やっぱり、同じか…。



そう思って消そうとしたとき、下にスライドしてしまった。
そこには、何か意味深な事が書かれていた。






山田 秋穂 の 呪い。






「やまだ…あきほ…?」



私と同じ名前だ。でも、名字は違うから、私の事ではない。



では、山田秋穂とは誰のことだろう。




私はこの事を皆に伝えた。




「ねえ、今、昨日見たサイトをもう一回見てみたら、続きがあって、山田秋穂の呪いって書いてあったの。」
「あきほって、同じ名前じゃん。」
「この名前で検索したら、何かわかるかもしれないよ?」

そこで、今度は皆で「山田秋穂」について調べてみた。

でも、検索しても、出てくるのは占いとか有名人の名前とかで全く関係のないものばかりだ。
でも、古いサイトを見ていくと、ある事件についてのことが書かれてある記事を見つけた。
その事件は、今から30年ほど前に起きたものらしい。


4月4日未明に山田秋穂ちゃんが行方不明になりました。まだ、目撃情報もなく、警察は発見を急いでいます。
秋穂ちゃんは行方不明になる数時間前に友達と遊んでいたそうです。
心当たりのある方はこちらの電話番号にお電話下さい。
×××-××××



行方不明…。まだ見つかっていないのだろうか。いや、でもさすがに30年もたったら見つかっているだろう。
きっと秋穂ちゃんが友達と遊んでいたのは、かくれんぼだろう。
この記事だけではまだわかることが少なかった。
続きを見ようとした時、また先生の声で遮られた。

今からバスに乗って観光に行くらしい。でも、菜子はどうしよう…
絶対にばれてしまう。
「もう、しゃーねーよ。このまま行こう。」
神谷くんが諦めたように言った。
「うん。わかった、行こう。」
私も、もうダメだと思った。無駄に隠そうとしたら、余計に怪しまれると思うし。
仕方なく私達は使いそうな道具だけを持ってロビーに向かった。

出席確認をした後、すぐにバスに乗った。菜子のことは、さっきと同じように言った。
先生は、起こしてくると言っていたが、どんなに揺すっても絶対に起きないだろう。
つまり、異変に気付き、私達は呼び出せれることになるはず。

それでもしばらくはばれないと信じ、席に座った。


「皆さん、右手をご覧下さい。こちらはとても有名な清水寺です。見えますか?」
遠くの方に清水寺が見えた。今からそこに行くらしい。
できれば行きたくない。今は行く気分じゃない。それより、もっと【ひとりかくれんぼ】について調べたかった。できるだけ早く終わらせたかった。
「なあ、俺たちだけ、こっそり抜け出そうぜ!」
後ろの席から神谷くんの声が聞こえた。振り返ってみると、後ろの席には神谷くんと、松田くんが座っていた。
「美希と、紫音にはもう、言ってあるけよ。」
「そうするよ。あまり行きたくないし。」
そうして、バスが止まり、前から順に下りていった。
出席確認はないはずなので、逃げるなら今だ。
私達はタイミングを見計らって、走って清水寺の後ろに周った。美希や紫音は走るのが苦手で、見つかりそうで怖かったけど、私は松田くんや神谷くんについていけてたので、私が2人を引っ張って走った。
「はあ…、なんとか見つからなかった…」

しばらくして、皆が落ち着いた頃に私はさっきホテルで調べたことを全て話した。
「行方不明だったんだ…。見つかったかな…?」
「いや、見つかってないから、今俺たちはこんな目にあわされてるんだろ?」

そうかもしれない。まずは調べなくちゃ。
今度は、「山田秋穂 事件」で調べてみた。