そして、はたと動きを止める。



「──シュガー?」

〈っ! はい! 今すぐ出ていきます!!〉




 あたしが睨みつけると、シュガーは慌てて機関銃の弾のように部屋を飛び出していった。


 変態め……!


 一応シュガー、男だからね!


 その様子を見ていたクコはクスクスと笑いを堪えきれないのか、肩を震わせていた。


普通、使い魔は人間の姿にならないと、主以外のものと会話をすることができない。


しかし、シュガー自身が強い力を保有しているためか、シュガーが気を抜いて魔力を放ってしまった時、意識すればシュガーが猫姿でも周りの人には言葉が理解できるらしかった。


 それからクコに手伝ってもらい、あたしは寝間着からクコが持ってきてくれた服を着た。



「──あれ?  今日は昨日みたいなワンピースじゃないんだね」



 あたしが今着ているのは、黒のワンピースみたいなんだけど、トップスはまるで軍服みたいだ。


しかも、ワンピースの中は見えてしまわないようにきちんと黒いパニエを穿いている。


どうせなら、昨日はこの格好が良かったなぁ。


ドレスで箒に跨るって結構危険だよ⁉︎


スカートが風でバタバタいうし、なっ、中が見えそうになっちゃうし……。



「今日の予定は、魔力の訓練らしいですよ」



 クコはそういいながら、あたしの天パの髪を整えてくれた。


 
「魔力の訓練?」



よかった。


ちゃんと訓練やらせてくれるんだ。


何もせずに、はい、実践です。なんて言われても何もできずに終わっちゃうところだった。



「国の軍隊の者が御指南くださると聞きました」



 そんなすごい方たちが……。


あたしは、この国を守るために喚ばれた者。


つまり、戦うことは避けられないだろう。


何も経験のないあたしは、皆よりも遥かに出遅れている。


それに、この豊かな自然。


見ず知らずのあたしを助け、世話をしてくれたこの国の人。


ここを守りたいと、昨日空から国を見て思ったんだ。


この国を守るとあたしは密かに心の中で、強く決意した。