「「きゃーーーっ!! 愛してるわ!」」


「「スペード・エース!! こっち向いてぇ~~!!」」


 ペンライトやサイリュウムの光だけがちらほら見える薄闇を、スポットライトの強い光が切り裂いたその途端!


 ライブハウスから溢れんばかりに詰めかけたヒトビトが一斉に、オレが叫ぶ、バンドの名前を一緒に、呼んだ。




「「「Cards soldier!!!」」」
   (カーズ・ソルジャー)



 うぁぁあああぁぁああぁあ!!




 言葉にならない、獣の咆哮みたいに怒鳴る声が、どわっと溢れるように湧く。


 熱気が高まるこの瞬間が、オレは一番好きだ。


 メジャーデビュー寸前の、超人気インディーズバンド『Cards soldier』ヴォーカルのスペード・エース。


 これが、オレの肩書きだったんだ。


 スペード・エースのトレードマーク。男にしては長すぎる背中までの髪をなびかせて、オレは機嫌よく怒鳴り、歌ってた。


「てめーら!! 今日もオレたちのライブに、よくも来やがったなー!!
 最後まで聞いてかねえヤツは、ぶうっとばすぞーーー!!」



 きゃーーーー!



 調子に乗って笑いながら叫ぶ、オレの声に返って来る返事は、いつだってキレイな女の子達の悲鳴だった。