「俺たちはもう成人しているんだぞ。なのに、どうして親の言うことをきかなければならない」

「それは──」

 ラーファンの言うことはもっともだろう。

 十八歳で成人の義を終え、ようやく大人の仲間入りを果たしたというのに両親はいつまでもラーファンの事を気に懸けていた。

 けれども、子が傷つく事を気に病まない親はいない。

 ラーファンは村の中でも血気盛んな若者として知られているため、彼の父母が然許(さばか)り気を揉むのは言うまでもない。

 幼くして両親を一度に失ったナシェリオにとっては、彼の不満は羨ましいものだった。

 両親の顔はおぼろげながらも記憶には残ってはいる。

 そんな記憶も毎日の生活で次第に薄れ、どんなに留めようとしても過ぎていく時間は無慈悲にナシェリオから面影を消し去ろうとする。