「おまえ、女か? 男か?」

 大きな木製のカップに入った酒を威勢よくあおっていた男が通りすがりに尋ねた。

 無論のこと真摯な問いかけではないだろう。

 男の顔つきを見るに、揶揄が混じっている事に思い至る。

 青年の面持ちは中性的なれど、その物腰は繊麗(せんれい)されたなかに男性特有の力強さがあった。

 故に見定めれば誤ることもない。

 ナシェリオには今更言われ慣れた事なのか男を一瞥し、少しの反応も示すことなく歩みを進める。

「聞こえてんだろ」

 そんな旅人の態度に酒の助けも相まってか、男は気が大きくなっていた。

 酔った勢いというものほど怖いものはない。

 先ほど見せつけられた素早い動きなど忘れたかのように鼻息荒く立ち上がった。