ひまりは帰宅する。



父親の待つ家へ。



家族の待つ家へ。



「ただいま」



「おかえり」



テレビを見ながらソファに横になる父親のそばに向日葵は近寄ると、


「ごめんねお父さんテレビは今日はダメなの。」


「ん、どうしてだ?」


父親は不思議そうな顔をした。


「あのね、」


向日葵は父親に、事情を話した。



借金があること、
怖い人達が今日家にやってくるかもしれないこと。



父親は向日葵の真剣な様子に、ただ頷いた。冷静に状況を理解したようだ。




向日葵に何もなければいい。
夜が平凡にすぎていくことを
ボクも願った。
傍観者だって願うことくらいは許されていいだろう。




しかし、
その願いはことごとく打ち砕かれた。




ドンドンッ!!



ドンドンドンッッ!!!




「水野さぁ〜〜ん。中にいるんでしょ、水野さぁ〜〜ん。」



柄の悪い男が二人、向日葵の家のドアを叩く。
1人は黒のスーツに短髪で目つきが悪い。おそらく下っ端だろう。
もう1人は茶色い光沢のあるスーツに、グラサンをかけている。金のチョーカーと高級そうな時計が目立っている。幹部か。


ドンドンドンッッ!


「み、ず、の、さぁ〜ん!いるんでしょー?わかってるですよぉ〜〜!」




黒スーツの(たぶん)下っ端が声を荒げる。


立ち去る様子はないようだ。



部屋の電気を消して気配を殺して乗り切ろうと思ったが、そうもいかないらしい。






ひまりは
心を決めた。