母さんの怒り気味な声を振り切って、玄関を出る。玄関の外に置いている通学用の自転車に乗って家の前の道に出る。う〜ん、どっちに行こう。ここで勘を働かせなきゃな。う〜ん、こっちは通学路だから、いつも通ってる。じゃ、反対に行くべきか。あ〜、何にもひらめかないっ。

「おっ、草太」

うっ、やべっ。通学路の方側の隣の家から、笑(ショウ)くんの声。ここで捕まるわけには…。これはこのまま、振り返らずに、自転車に乗って逃げるしかないっ。

「おおおっ!ちょい待ちっ」

笑くんは、凄い瞬発力でダッシュし、僕の自転車の前に立ちはだかり、ハンドルの真ん中を両手でガシッと力強く掴んだ。ヤバイ、捕まった…。