≪蘭side≫


バイト先のベーカリー『Anne』で、衝撃的な再会を果たした。


いつだったか、少し前に電車で目が合った男。

すらっとした長身で端正な顔つき。

視線が合った瞬間、ワザとらしく微笑んだ。

恐らく、彼ご自慢のスマイルなんだろうけど。

私には通用しない。


男なんて、誰だってみんな同じ。

女を見た目で判断しようとする。

スタイル、顏、髪、胸、声、仕草……。

挙げたらキリがない。


別に好き好んでこの容姿をしている訳じゃない。


母は、高校2年の時に5歳年上の男性と恋に落ちた。

相手はフランス人の父と日本人の母との間に生まれたハーフの男性らしく、必然的に私はクォーターという事になる。

見た目は日本人だけど、部分的に少し日本人離れしているらしい。

顏は比較的小さめだし、手足は妙に長く、目鼻立ちがハッキリしている。


この顏、あまり好きじゃない。

小さい頃は『ドール』というあだ名で呼ばれていた。

見るからにお人形さんみたいだって。


褒め言葉なんだろうけど、私にはそう聞こえない。

だって、私の内面は関係ないって事じゃない。