笙は昼食の買い出しのために外出していた。

買い物を終えて、店へと帰ろうとした時である。

「やめてください!」

悲鳴のような声が聞こえた。

「何だ?」

笙は立ち止まると、キョロキョロと首を振って辺りを見回した。

「ありゃ?」

視線を向けると、そこには野次馬が大勢いた。

何事かと言うように、笙は野次馬の中へと足を踏み入れた。

やっとの思いで、野次馬の先頭に立った。

サラリーマンの男と女子大生が中心にいるところを見ると、揉め事の発端は彼らのようだ。

(何があったんだ)

呆れながらも、興味本位で笙はやりとりを見つめた。