「結局持って帰って来ちゃった」


さっきまで土砂降りだったのに


翠と少し話している間に


すっかりと止み、雲も晴れている。


どこかで虹がでないかと期待したが


何も起こらないまま、家に着いた。


「どうやって返せばいいんだろう」


家の前で立ち止まり、


さっき借りたハンカチを見た。


本当のことを言うと、


苳は翠のことを何も知らない。


初めて会ったし、


さっき名前を聞いただけで


笑顔だけを残して去って行ってしまった。


すると、家の玄関が開き、


中から部屋着の弟が出てきた。