最後の力を振り絞って、扉を押す。


 この扉をスムーズに開けて、閉めた、あのレイという長身の男は本当に力が強そうだ。


 男なら逞しくならないと……。


 慶兄のように──か。


 時刻は午後12時7分。残りが3分しかない。


 扉を開けると目に付いたのは、薄暗さだった。トンネルの内部のようだが、外の光が差し込んでいる。


 20mほど先に、トンネルの出口が見えた。逆光で見えないが、確かに人影があるようだ。


 今開いたばかりの扉の外観が気になる。パッと確認すると、汚い茶色の観音扉だ。外から見たら使われていない扉だと、思うだろう。


 歩みを進めると、銀色のチェーンの光が見えた。進入禁止という看板だろう。裏から文字は読めないが、ダイヤの形をした看板が目に付く。
 

 周りはフェンスで囲まれている。その外には、森がある。公園の中の一角かもしれない。