オレ達は新宿の駅前より少しだけ外れた路地を歩いていた。

 
 俗にいう『裏路地』という魅力的なキーワード。


 右手に見えた渋そうな珈琲(コーヒー)店に入った。


──『カランカラン』


 ドアベルの音が、店内に偽カップルの来店を告げた。


 ほどよく人がいる店内客の視線が刺さり、目を合わせられない。


 幸せそうだなという大人の眼差しと、空気を読めバカという子どもの眼差し。


 そりゃあこんなに女の子が引っ付いていたら誰だって思うよな……。


「なぁ、愛梨……もういいだろ。席座ろうぜ」


「うんっ!!」


 愛梨はそう言うとすっとオレの身体から離れた。


 ように見えたが…。


 また離れた身体がまたくっつきだす。


 オレの左側に位置を変えて、またベタベタする。これも俗にいう所の『カップル座り』というやつだ。

 
 対面で座らずに横に座る。


「あのなぁ、ご褒美だかなんだか知らないけど、雷也が黙ってないぞ…。というか、お前らしくないしやめろよ……」


 愛梨は顔をあげてこちらを見た。口を少し尖らせている。


「うるさいなぁ、雷也がしろって言ってるし、あたしもしたいからやってるだけだよ。って、龍ちゃんってこういうの……嫌い?」