「ああ、もう、ほんっとイライラする」

 ビールジョッキをガン、とテーブルに打ち付けると私は声を荒げる。

「まあまあ良美さん。どうせあんな奴、いつか痛い目見るからさ」

 美樹が苦笑いを浮かべながら私をなだめる。

「そうかな? ああいうタイプって、意外にうまく渡っていくもんじゃない? 腹立つけど」

 私が目を細めると「まあ確かに」と美樹は少しぽってりしていて張りのある下唇を突き出しながら肩をすくめた。

 美樹の仕草は妙に色っぽい。

 私に"その気"があるわけではないけど、女の私から見ても美樹は可愛かった。

 その上明るくて社交的。決して上辺だけではなく、笑う仕草も裏表がないように見える。

 だから、男にもモテるんじゃないか、と出会った頃から思っていた。