「先輩ー、何読んでるんですか?」


「うん…硝子のトンカチ…」


さっきから、
私の後ろで高城君が何か言っているけれど、
それでも私は、高城君を振り返らなかった。

私は今忙しいのだから。


最近読み始めた推理小説が、
丁度謎解きに差し掛かったところなのだ。


「なんですかそれ!?ネーミングセンス!!」


高城君が、ブッ、と噴き出す。

そして、私の座ったソファの周りをゴロゴロと転がり始めた。


「構って下さいよぉ〜先輩〜」


甘えた声を出す高城君。

もう!今いいところなのに!


本から視線を高城君に移すと、
えへへと無邪気に笑っていた。

怒りたい。
でも高城君には怒れないっ!


憎めないっていうのはこういう事を言うのだと思う。