―――プロローグ―――



生まれて初めてあたしが愛した人は

特攻隊員だった。



大きな愛を胸に秘めた、

優しくて強い、あたたかい人。


あたしの大切な人。



彼は、あたしと出会ったときには

もうすでに死を覚悟していた。




「愛する人たちを守るために

俺は死にに征くよ」



揺るぎない瞳で、そんな悲しいことを言った。



「行かないで」


泣いてすがるあたしを、


彼はただ静かな眼差しで

あたしを包み込むだけで………。




そして、ある夏の日、


恐いくらい綺麗に晴れた青空の向こうへ、


消えていった―――。





ねえ、彰。

あたしの声が聞こえますか。


今、あなたはどこにいるの?


そこは、痛みも苦しみもない、

安らかな場所ですか?



風に吹かれる花びらのように

儚く散ってしまったあなたが


せめて今は

穏やかに眠っていることを祈ります――