「救出、完了……かぁ」




そのメッセージを読み終えると、迷うことなく目の前の教室のドアを開けた。

太陽が沈みかけさっきより濃くなったオレンジが、ぼんやりと机に座った男を照らしていた。


相変わらず、可哀想な人。




「何で……佐和ちゃんが」


「さあ、どうしてだろうね優也」




顔を上げ、私の存在に気付いた優也が動揺した瞳を私に向けた。


この男に可哀想だとか、言われたくない。

……私は、あんたとは違う。




「さっちゃんならさっき帰ったよ」


「へー、そう、会えたんだ。ブチ切れられた?殴られでもした?」




いつもと変わらない私を装いながら優也に近付く。




「さっちゃんが俺にそんなこと出来るわけないじゃん」




そしてバカにしたように口元を歪めた瞬間、思いっきり頬を叩いた。

その音は異様なくらい教室に響き渡った。





「さ、わ……ちゃん?」