────…


車が到着したのは、繁華街のちょうど真ん中、大通りの外れにあるパーキングだった。


「お前と陽は後ろからついて来い」


車から降りるなり、そう指示してくる十夜さん。


「何で?」

「バレたくねぇだろ?」

「………」


まただ。

十夜達は初めからそうだった。


登下校の時も別々にしてくれたし、学校の中でも話しかけて来た事がない。


全部理解してくれていて、あたしの為にそうしてくれてる。


それが、凄く嬉しかった。



「あたしはバレても大丈夫!誰が来ても負ける気ないから!」


ニッと笑って皆にピースすると、煌がわざとらしく溜め息をついた。


「……ったく暴れんじゃねぇぞ?」


「はぁ?暴れないし!」


煌の失礼発言に顔を顰めて、思いっきりパンチを食らわせる。


「凛音」


「ん?」


「俺はお前を危ない目には合わせたくない。だから、俺等の傍から離れるな」


十夜……。


「うん」


十夜の言葉に素直に頷いて一緒に歩き始める。


──と。


「あ、ちょっと待って!」


数メートル歩いた所で一つ思い出した。


壱さんに車を開けて貰って、通学鞄の中からお気に入りの黒縁眼鏡を探し出す。


「これで少しは変装になるよね」


この前十夜に貸した黒縁眼鏡をかけて、髪の毛を軽くアップにしてみた。


「凛音、雰囲気違って可愛いー」


「そうかな?ありがと、陽」


褒めてくれた陽の手を握って一緒に歩き始める。