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あの日から数日。


不思議な事に嫌がらせが全くない。


鞄に入っているあたしの挑戦状も出番がないまま待機中で。


そのお陰なのか、頭の中は冬吾くんが言った言葉で一杯だった。


いや、それだけじゃない。


十夜に会う度意識してしまい、どうしていいか分からない状態だったりする。


……全部冬吾くんのせいだ。




あたしは、絶対十夜を好きにならない。


ううん、違う。好きに“なれない”。


なっちゃいけないんだ。



だってあたしは貴兄の、……いや、獅鷹の総長の妹だから。



それを、あの日から何度何度も自分に言い聞かせている。


“好きになっちゃ駄目”だって。




けど、そんな思いも虚しく、何故か最近優しい十夜。


喋り方とか態度はあんまり変わらないんだけど、雰囲気が何となく優しい気がする。



……って、駄目だ駄目だ。


もう十夜の事を考えるのはやめよう。


そう決意をして、心を閉ざした。




だけどまだ心の何処かで迷いがあったのか、警戒してたのにも関わらず六時間目が始まる前、嫌がらせされた。


しかも、妃奈といる時に。


運がいい事に妃奈は誰かに押されたとは思わなかったらしく、あたしの不注意で転けたと思っていた。


妃奈が鈍感で良かった。


陽に言われたら今まで隠してきた意味がないからね。