やって来たのは教室棟の一番端にある資料室。

 人影は少ないものの、日当たりはいい。

 まあそれはともかく。



「さてと……若葉くん、大丈夫だった? すごい悪口言われてたけど自覚してる?」


「うん」



 ホントに!?

 悪口を言ってきた相手と一緒に笑ってたと思うんだけど!


 と、すぐそこまで出しかけていた言葉を、真面目な若葉くんの表情を前にして、飲み込んでしまう。



「平気。ちゃんとわかってるよ。あの人たちの悪意も、自分がどれだけバカにされていたのかも。

 挑発に乗りたくなかったからああやって返したけど、まさか、紅林さんが間に入ってくるなんて思わなくて」


「……!」



 若葉くんは、自分の置かれている状況がちゃんとわかってた。

 その上で、どう乗り越えるべきか考えていた。

 ということは、私のしたことって、余計なお世話……。