夜が怖かった。

 長く孤独な気がして。


 いつか太陽を飲み込み、朝を奪ってしまうのではないかと、謎の不安にさいなまれる日々。

 怯えてばかりの幼い私を、いつだってお母さんの優しい手と声がなぐさめてくれた。



『どうしたの? セラちゃん』


『……ひくっ、みんながセラのかみ、へんだっていうの』


『まあ、そんなことないのにね!

 セラちゃんの髪は、お母さんに似てとーってもきれいよ。なんたってお月さまの色なんだもの』


『ほんとうに?』


『あら、お母さんが嘘ついたことある?』


『……ない』


『ふふ。ねぇセラちゃん。セラちゃんは優しくて、とてもいい子よ。そんなに泣かなくてもいいの』