「女が目を覚ましたら…ーーってけばいーんだよ。は?おめぇ、もしかして…ーー」


ナディアは何と無く聞こえる会話にうっすらと目を開けた。


…ここはどこ?


周りを見ると、いつも寝起きしている煌びやかな部屋とは似ても似つかない場所にナディアはいた。


普段宮殿から出ることがほとんどないナディアは、古く汚いこの部屋におどろいた。


継ぎ接ぎだらけの材料で作られた壁に、埃の溜まった床。
蹴飛ばしたら壊れてしまいそうな棚や机。

そして少し動いただけで軋む硬い寝具。シーツは黄ばみ、少し湿っている。


今まで豪華すぎる生活をしてきたナディアにとってこの部屋は驚きで溢れていた。

しかし今にも消えてしまいそうな小さなランプの明かりに照らされた部屋に、嫌悪感というよりは好奇心を持ってしまうあたり彼女の皇女としての異端さが垣間見える。


「お頭(おかしら)、いい加減にしてください。」


部屋を見渡していると、奥の部屋からそんな声が聞こえて来た。