翌日の昼休み。

「上杉さん」

椅子から腰をあげた京香を、恭汰は呼び止めた。

「何ですか?」

そう聞いてきた京香に恭汰は周りを見回した。

オフィスにいるのは自分と京香の2人だけだった。

「これ…」

恭汰はカバンから白い封筒を出すと京香に差し出した。

京香は首を傾げた後、恭汰の手から白い封筒を受け取った。

京香が封筒を開けて、中身を取り出した。

「…何ですか、これ?」

中から出てきた1万円札に京香は顔をしかめた。

「使わなかったからそのまま返すよ」

そう言った恭汰に、
「いえ、これは先輩が受け取ってください」

京香は1万円札を封筒の中に戻すと、恭汰に差し出した。