梅雨入りした6月の中旬。

その日、1人の女性が渋谷恭汰(シブヤキョウタ)の勤める不動産会社に配属されてきた。

「今日から働くことになった、上杉京香(ウエスギキョウカ)さんだ」

部長の紹介で1歩前に出た彼女の美しさに、その場にいた全員が思わず見とれてしまった。

たまご型の顔立ちに、色白の肌。

それを飾るのはクールな雰囲気が漂う二重の大きな目に小さな鼻、ベビーピンクの唇だった。

モデルのように華奢で抜群なスタイルがスーツのうえからでもよくわかった。

(あの頃から全然変わっていないな…)

1番後ろのデスクから京香を眺めながら、恭汰はそう思った。

「上杉です、よろしくお願いします」

ペコリと、京香は一礼した。

その瞬間、パチパチと周りから拍手があがった。