――――――――
――――……


「あ……そや。お土産」



彼のそんな言葉に、また過去の思い出にトリップしていたわたしは、現在に引き戻された。


彼はポケットから、小さな四角い箱を取り出した。

黒い箱にシルバーのリボンがかかっている。


その箱の大きさから中身はなんとなく想像できるけど……。


それでも自分の口から中身を言うのは気がひけて、わたしは何も言えずにいた。


彼はそのままリボンをはずし、箱を開けると、わたしに中身を見せた。


「長い間……寂しい思いさせてごめんな……」


そう言いながら、箱の中のキラキラと輝くリングをわたしの左薬指にはめる。

そして、そのまま手をとって指にキスをしてくれた。


「これからは、ずっとそばにおってくれる?」


わたしの顔をじっと見つめる彼。


……ずるい。

そんな表情するなんて反則だ。

わたしを見上げるその表情は、なんだか子供みたいで、大の大人の男性に向かって“可愛い”なんて思ってしまった。


返事をする代わりに、彼の頭に手を回してそのまま抱きしめた。

香水の香りがする。

日本を発つ時に、わたしがあげた物だ。

ワックスで無造作にセットされた髪を優しくなでた。


「千春……」


そうつぶやくと、彼はわたしの腰に手を回してさらに抱き寄せ、胸に顔を埋めてきた。




「……あかん」


「え?」