オレは1人、彼女を待っていた。

1年間一緒に過ごしたこの教室で。


ふいに窓の外を眺めると、ちょうど1階の渡り廊下が見えた。


卒業式のことを思い返す。

あの日、オレはあの渡り廊下でサトシと話していた。






オレはサトシに今思っていることを正直に話した。


サトシはそれを黙って聞いていた。


そして

「お前の気持ちなんか、とっくにわかってたし」

笑いながらそう言った。


「……で。ユカリはどうすんの?」


「ユウにはもう……昨日話した」


オレは卒業式の前日ユウを呼び出した。


そしてユウにもオレの気持ちを包み隠さず話した。


「そんなん……知ってた」


サトシと同じようなことをユウはポツリとつぶやいた。


「ナオのアホ……」


「ごめんな……オレ」


『ごめん』なんて、そんな言葉で済むわけじゃない。

だけど、それ以外の言葉も見つからなかった。


「もうー! ほんまに! アホ!」


ユウはオレをじっと睨んだ。


「ナオが優柔不断でいつまでも結論ださへんから……。わたしの新しい出会いのチャンスが遅れてしまったやん! 責任とってよねー」


「え? 責任……?」


「うん。とりあえず、合コン仕切るように!」


ユウはそう言って、オレの罪を笑い飛ばしてくれた。