次の日の夜、報告に行ったメイさんを待っていると勢いよく扉が開けられ、その音に体がビクリとはねる。
 体を動かして入り口のほうを見ると息を切らしているメイさんがいた。いつも元気なメイさんだけどここまで取り乱している様子は見たことがない私は内心で首を傾げた。

「カルドーレ様! 一大事です!」

「――え……?」


***


 メイさんからお知らせを聞いた私は食堂の調理場を借りていた。
 加熱台のガラスの天板をずらして、中にある石置き場所に炎が蓄えられた蓄力石を入れて手前にあるのぞき窓から石が見えるか確認。天板を戻し、鍋はのせるためにいくつかある爪の上にきちんとのせて。
 お米と水を鍋に入れてのぞき窓に手を近づけて蓄力石を発動させた。

 鍋の様子を見ながら私はメイさんの言葉を思い返す。息を切らしてやってきたメイさんは、シン様が熱を出しているという情報を入手したと早口で言い切った。
 昨夜のダンスの時は手袋をしていたし、私は自分のことで精一杯だったから全然気づかなかった……。
 ここ数日の間、ほぼ眠らずに国務にかかりきりだったことが要因らしく、今日はご飯をほとんど食べられていないそうで。
 昨日のダンスのお礼も兼ねて何かをしたい。
 私にできることは少なくて悩んだけれど、ふと自分が風邪をひいた時のことを思い出した。
 私が風邪をひくとお母さんは決まっておかゆを作ってくれる。この食べ物は色々な国を旅行しているお客さんがソレドに寄ってくれた時にお母さんに話したそうで。
 他国の料理だけど消化によくて風邪をひいた時などに向いているのだという。

 考えてみるとソレドには色々なメニューがあるけれど、もしかするとお母さんはお客さんに聞いたりして情報を集めているのかも。
 他国との行き来や交流はだんだん増えていて、物や情報など便利なものは国民に取り入れられているものもある。
 沸騰してきたのでのぞき窓にまた手を近づけて火力を調整。
 ――何度自分が使っても蓄力石って不思議……。手を近づけて念じるだけで使えるなんて、蓄力石を使う所を初めて見た時は生き物かと思って大泣きしたってお母さんが言ってたなぁ……。
 前にお父さんがお母さんに持たされたというしゃもじ――人からのもらい物らしい――を借りて使いながら、ご飯の具合を見ると柔らかくとろみが出てきて完成は近い。