「筆記試験、ですか?」

 朝食後、大量の布切れを持ったメイさんが笑顔で頷いた。
 昨日面談をしたから実践的な試験だけかと思っていた私は首を傾げてしまう。
 メイさんはたくさんの布の切れ端を部屋の隅に置き、ソファーに座っていた私のもとへ歩いてくると肩にかけていた鞄から冊子のようなものを取り出して見せた。
 よくよく見るとそれは冊子ではなく、文字が書かれた紙が結構な枚数重ねてあるもので思わず表情が引きつる。

「今日はお部屋でこちらの内容に答えていただきます」

 「頑張って下さい」と励ましてくれるメイさんに、私は気が遠くなりそうだった。


***


 始めるなら早くから始めようと思い早速取りかかる。
 部屋には読み書きに向いた机と椅子も備えつけられていたのでそれを使わせてもらうことに。ペンとインクは家から持ってきた使い慣れたもの。
 綺麗な文字で書かれた問題が多数あって、何だか学生時代のテストを思い出した。

 ――セルペンテ国の起源を説明しなさい。

 うん、これは簡単。
 古に土地を守っていた蛇神様が出会った人間の女性に恋をして結ばれた、と。
 このことは小さい時から両親に聞いているから大丈夫。

 ――国王と第一王子が王族血縁者ではなくその他の国民と婚姻関係を結ぶのはなぜか。

 ……これは確か学校で習ったはず。
 当初は王族血縁者である貴族を迎えたが何年経っても子供に恵まれず、やがて貴族の妻は病死。その後王族と血縁関係のない者を妻に迎えたところ間もなく子供に恵まれ、後妻となった女性が長く生きられたことによる。また、蛇神様の血と力は代々国王から次期国王となる第一王子にのみ顕著に遺伝するため、第二王子以降は基本これに該当しない、と。
 第二王子以降の方も子孫なのに、第一王子だけ蛇神様の血が濃いなんて不思議。これは起源と関係があったりするのかなと思ってお父さんに聞いたことがある。そうしたら何と国王であるルニコ様に直接聞いてくれたみたいだけど、詳細は分からないとお言葉をいただいたらしくてその時は少し落ちこんだ。
 その時を思い出しながらインクをつけたペンをはしらせ、次の問題に目を向ける。