「――様! ――カルドーレ様、朝ですよ!」

 頭に響く声に意識が浮上する。
 ふかふかしたベッドの中で目を開ければ模様の描かれた天井が視界に入り、慣れない光景に心臓がドキリとした。
 だけど次いで視界に入ったメイさんの姿にここがどこであるかを理解する。
 昨日は到着が夜だったから真っ直ぐ部屋に案内してもらったんだ。
 一部屋の大きさとか家具の煌びやかさなどに一つ一つ驚いてたら目が冴えてしばらく眠れなかった。

「もしかして寝坊しました……?」

 寝起きから失敗なんてしたらお母さんに何を言われるか……。
 「早々にしでかすなんてしばらく帰ってくるんじゃないよ!」とか言って家を追い出されそう!
 慌てて起き上がる私にメイさんは「まだ早朝ですからご安心下さい」と眩しい笑顔。それならよかった……。眠気が一気に吹き飛んだけどね。
 メイさんが刺繍の施されたカーテンを開けると朝日が窓から入りこんできて、眩しさに目を細めた。

「今日もいい天気ですよ。始まりの日にふさわしいですね」

 元気な声で話しかけてくれるメイさんに申し訳ないのだけど、始まりの日なんて強調されると一気に緊張してきてしまう。
 今日は面談があるんだよね。王子様と面談するのかな?
 それとも他の王族の方がするとか?
 学校での三者面談しか経験がないから想像がつかない。

「早朝から起こしてしまいすみません。トリステ様からカルドーレ様はお声かけで早朝でも起きていただけるとお聞きしたもので……」

「どちらかと言えばそうですけど、何かありましたか?」

 気づかないうちに何かやらかしてしまったのだろうか。悪い想像しか浮かばない。
 グルグルと考え出しそうになっていると、メイさんは「こちらの都合なのですが……」と返してくれた。

「大変申し訳ございませんが、面談を朝から行わせていただきたいそうです」

 ――え……?
 思わず瞬きをしてメイさんを無言で見つめれば、「時間の関係がありまして、朝食をとりしだいカルドーレ様から面談を受けていただきたいのです」と変わらない内容が返ってくる。
 寝起き直ぐにお母さんの拳骨を受ける時以上の衝撃に、できることなら気を失ってしまいたいと心底思ってしまった。